鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)

表彰台には、松岡さんだけではなく
ちゃんとガイドランナー専用の表彰台とメダルも
授与される。そこで課長に教えてもらったのだが
メダルには、視覚障害も喜びを分かち合えるように
色々メダルに工夫されているらしい。
前回は“スチールボール” の音が鳴るようになっていた。

今回の東京パラリンピックには、メダルに点字が付いてあり
感触で確かめるようになっているらしい。
松岡さんは、金メダルを手で障りながら確めていた。
確かに、これなら色を見分けることが出来ない
視覚障害の選手でも実感してもらえる。

何度も確かめながら笑顔になる松岡さん。
途中で加藤さんと仲良さそうに話をしていた。
周りに大きな拍手と声援を浴びながら
こちらに戻ってきた。

「松岡さん、加藤さんおめでとうございます」

「ありがとうございます。
金メダルを取れたのも皆さんの温かい応援があったからです」

松岡さんは、私達に笑顔で答えると深々と頭を下げた。
何とも謙虚な姿勢だろうか。
うん?あれ?夏美さんは……?

周りを見ると夏美さんは、大声で応援をしたのが
恥ずかしかったのか父親の篠原さんの後ろに
隠れてしまった。あぁ、せっかく。
おめでとうと言えるチャンスなのに……。
私は、急いで夏美さんのところに向かった。

「夏美さん。いいのですか?
今ならおめでとうと言えるチャンスですよ?」

「……いいです。あんな大声で応援していたのを
知られたら恥ずかしいわ」

モジモジとしおらしくなってしまう。
やはり松岡さんの前だけ大人しくなってしまう夏美さん。
普段は、気が強くてしっかり者なのに。
篠原さんも困った顔をしていた。
すると松岡さんが

「夏美さん……?夏美さんは、こちらに
いらっしゃるのですか?」

目が見えないため声を頼りに捜していた。
夏美さんは、どうしたものかと悩んでいた。
よし、こうなったら。

「松岡さん、夏美さんならこちらに居ますよ!
そのまま左に歩いて来て下さい」

余計な、おせっかいかと思ったが私が声をかけた。
このままだと話も出来ないし。

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