鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)

私は、声を出して応援した。
しかし800メートルは、陸上の格闘技と言われている
理由を間近で見ることになった。
2位で松岡さんペアと争っていた大柄の選手が
カーブの辺で曲がり切れずに転倒したのだ!!
すぐ後ろに松岡さんと加藤さんがいた。
危ない……巻き込まれてしまう!!

「キャアッ!!松岡さん!?」

夏美さんは、思わず悲鳴を上げた。
だが加藤さんが咄嗟に叫んだ。

「松岡。前に大きく跳べ!!」

するとすぐさま松岡さんは、加藤さんの
指示に従い前に大きく跳んだ。
2人の咄嗟の判断力のお陰で巻き込まれずに済んだ。
そして、そのまま息を合わせるように
スピードをさらに上げて行った。

ガイドランナーの加藤さんの咄嗟の判断力も凄いけど
それをすぐさま行動に移せる松岡さんの反射神経にも
驚かされた。これは、長年ペアを組んでいてもなかなか
出来ることじゃないと思う。
2人の信頼関係が合ったからこそ出来る神業だ。

そして、少し離されてしまった前の選手に追い付いた。
両選手とも一歩も譲らない。ゴールまでもう少し……。
頑張って松岡さん、加藤さん。
勝てたら夏美さんの告白が待っているのだから。
私は、必死に祈った。
すると夏美さんが今までで1番大きな声で

「松岡さーん。負けないでー!!」

耳まで真っ赤にして声援を送った。夏美さん……。
その声が届いたのか松岡さんと加藤さんが
前に出てきた。数秒の差だった。
周りの観客も松岡さんと加藤さんの応援する。
たくさんの応援を受けながらゴールを切った。
優勝は……?

『優勝は、日本。松岡桃吾選手
ガイドランナー加藤のペアです!!タイムは……』

アナウンスから優勝の発表があった。
なんと松岡さんペアが1位を取ったのだ!!
念願の金メダルだった。

「やった~!!」

私と夏美さんは、お互いに抱き合って喜んだ。
良かった……本当に。
見てみると疲れ果てながら加藤さんは、
松岡さんに声をかける。
そして抱き締め合っていた。

これは、1人の力で叶えた優勝ではない。
ガイドランナーと選手との熱い絆と信頼関係で
取った金メダルだ。
夏美さんは、涙を流しながら喜んでいた。
良かったね……松岡さん。

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