鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)

父親として複雑なため無理やり剥がそうとする。
しかし松岡さんは、ギュッと抱き締めたまま
離そうとしない。

「ダメですよ。彼女は、もう僕のものです」

「まだお前のものじゃない!!」

松岡さんと篠原さんで夏美さんの取り合いをしていた。
何とも微笑ましい光景だろうか。幸せそう。
私は、クスクスと笑いながら見ていた。
すると隣で見ていた課長が私の肩をポンッと叩いてきた。

「俺は、そろそろウォーミングアップをしてくる。
松岡が活躍して告白を成功させたんだ。
俺も負けてはいられない」

やる気に満ちた表情をしていた。課長……。
どうやら松岡さんの活躍を見て火がついたようだった。
これは、凄い競走になりそうな予感がする。

「はい。私も付き添います」

それは、私も同じだった。
松岡さんと夏美さんを見ていたら
その影響を受けてかテンションが上がっていた。
私も全力で課長のサポートがしたい。

一緒にウォーミングアップをする。
そして、いよいよ運動機能障害の最後のクラス。
切断による100メートル。
決勝が行われようとしていた。

見せ場は、『義足の鬼課長』で元・金メダリスト。
日向亮平選手。
そして『義足の世界絶対王者』と『義足の貴公子』の
異名を欲しいままに操るロンさんこと
ロバート・ウィルソン選手だ。

最大のライバル。そして
金メダリストと銀メダリストの競走なので
たくさんのメディアや観客は期待をしていた。
私もドキドキしながら見つめる。

頑張れ……課長。
私の両親も見に来てくれているのよ!
これで結婚が出来るか、出来ないかが決まる。
翼君だって……きっと来てくれるはずだわ。
私は、不安に思いながら上の観客席に目を向けた。
するとお母さんに車椅子を押してもらいながら来る
翼君の姿が見えた。

「翼君!?」

良かった……ちゃんと見に来てくれたんだ!?
喜んでいると翼君と目が合う。すると照れたのか
慌ててフンッとそっぽを向かれてしまった。
あ、そっぽを向かれてしまった。
もう素直じゃないわね。意地っ張りで

フフッと笑ってしまう。
これで観客は、全員揃ったわ。
後は、課長が金メダルを取ってくれるだけ。
ロンさんに負けないで……。
私は、ギュッと祈る気持ちでいた。お願い……神様。

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