鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)

私は、大きな声援と共に課長を叱り飛ばした。
課長が負けるのは、見たくなかった。
何より『鬼課長』として周りから
恐れられている立場なのだから、もっと
凄く恐れる存在で居てもらわないと困る。

それが恋人だけではなく部下としての私の願いだ!!
きっとテレビで観ている会社の部下達も同じ意見だろう。

いや、それだけではない。
たくさんの課長ファンや応援してくれる
日本の国民達も同意見だろう。私の両親だって。
するとその時だった。

「日向の兄ちゃーん。頑張れー!!」

私に続くような大きな声で応援を始めたのは、
翼君だった。私は、驚いて上の観客席を見た。
翼君は、車椅子に座った状態で必死に応援をしていた。

「俺の架け橋になってくれるのではなかったのかよ!?
だったら負けるなよ……俺に見せてみろよ!!」

翼君は、大きな声で精一杯の想いをぶつけていた。
これが彼の本音なのだろう。
ずっと諦めきれなかった彼の本音。そうよ。
翼君のためにも頑張ってほしい。

「そうですよ~!!
亮平さん。頑張ってくださーい!!」

私も負けずに応援した。
するとたくさんの観客の人達も釣られるように
大きな声で応援を始めた。

「そうだぞ~日向選手。頑張れー!!」

「日向選手~!!」

課長コールが始まるのを見ていて
たくさんの人から期待と応援してくれているのが
分かり嬉しくなった。涙が溢れて止まらなかった。
課長もそれに応えるようにスピードを上げて行く。
ロンさんとの距離は、数センチ後ろの差だった。

「亮平さーん!!」

私は、振り絞って1番大きな声で応援した。
ゴールまであと……少し。
課長は、必死に食らいつく。そしてロンさんを追い抜いた。

「やった……!!」

だが喜んでいるのは、つかの間で
すぐにロンさんも追い上げようとしてきた。
距離がまた縮んだ。実力も速さも互角。
負けず嫌いな2人は、最後の最後まで一歩も譲らない。

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