再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~
「あれ?和田さん亭で働かれている人ですよね」
頬張ったつくねを咀嚼していると、男性に声をかけられた。
こんなところで勤務先を耳にするなんて思わなくてギョッっとする。
これは間違いなくお客さんだろう。
プライベートでお客さんと遭遇するなんてすごく嫌なんだけど。
自分がよく行くお店の店員に他の場所で会ったとしても、普通は声をかけないと思う。
私だったら絶対に声はかけないし、知らない振りをする。
非常識なことをする人は誰よ!
舌打ちしたい気持ちを押し殺し、声をかけてきた人物を視界に入れた。
「あ……」
この人、お昼にお弁当を買いに来ているサラリーマンだ。
今日も日替わり弁当を買いに来ていた。
よくお店に来てくれるお客さんの顔はだいたい覚えている。
この人も常連の部類に入る。
「やっぱり。こんなとことで会えるなんて奇遇ですね」
満面の笑みで話しかけてくる。
一応、お客さんだし無下に出来ないので作り笑顔で答えた。
「こんばんは。そうですね」
「この店、よく来るんですか?」
「いえ、たまに……」
「そうなんですね。僕は初めて来たんですけど、料理がすごく美味しいですよね」
「そうですね……」
「何かおすすめとかありますか?」
そんなのお店の人に聞いたらいいと思うんだけど。
たまにしか来ないって言ったのに、どうして私に聞くのか意味が分からない。