【完】ファムファタールの憂鬱
「好きだよ。大好き…もしも、このまま静紅ちゃんが子猫になったとしても、何度だって言うよ」
「じん、くん……」
ぎゅうぎゅうっと抱き締められる腕に力を込められて、じんくんの体温に、雨で冷えていた体が熱を持って蒸発しそうだった。
「…知ってたの?」
「ううん」
「じゃあ…なんで…?」
「好きになるのに理由はないでしょ?だから…不思議と静紅ちゃんのことなら受け入れられちゃった」
「こんなに変な体質なのに?」
そういうと、こら、と小さく怒られる。
「こんな、とか言わないの。静紅ちゃんはどんな静紅ちゃんでも、俺の好きな静紅ちゃんに代わりはないんだから。……たとえそれが静紅ちゃん本人でも、傷付けるのは、だーめ」
そう言って、また微笑む。
その陽だまりのような笑みを見つめながら、私は口元を押さえて、「くしゅん」と小さくくしゃみをしてしまった。
あぁ…ジーザス。
これが、私の運命ですか?