飛鳥くんはクールなんかじゃない
「あら〜、花帆ちゃんじゃない。どうしたの?」
「こんばんは、亜子さん。こんな時間にすいません。飛鳥くん、いますか?」
渡家の扉を開けたのは、飛鳥くんのお母さんの亜子(あこ)さんだった。
飛鳥くんの家久しぶりだから、なんだか緊張する。
亜子さんは美人で優しくて、ちょっとお茶目な人。小さい頃から飛鳥くんと一緒によく遊んでくれたっけ。
飛鳥くんの容姿の良さは亜子さん譲りだ。
「ごめんなさいね。飛鳥、まだ帰ってないのよ」
「……あー……、そうですか」
せっかく飛鳥くんに会いにきたのに、なんだか勢いが削がれてしまった。
そっか。飛鳥くん、まだ帰ってないんだ。
……まだ、みんなでいるのかな。一華ちゃんとも、いるのかな。
一旦家に戻ってまた後で出直そう。そう思って亜子さんにお礼を言おうとしたとき、亜子さんは笑って私に言った。