飛鳥くんはクールなんかじゃない
「せっかくだし、晩ご飯一緒にどう?理穂ちゃんには私から言っておくから」
「え、でも……」
「お願い!主人も今日帰り遅いし、私1人なのよ〜」
理穂(りほ)ちゃんというのは、私のお母さんの名前。
「ねっ?」と亜子さんにお願いされては、もう私に断る理由はなかった。たまにはお父さんとお母さんに2人きりの時間をあげるのも悪くない。
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔しちゃいます」
「ふふっ、そうこなくっちゃ!」
とびっきりの笑顔を浮かべた亜子さんに歓迎されて、私は久しぶりに飛鳥くんの家の中に入った。
リビングに入るとすでにいい香りがキッチンから漂っている。
「私、手伝います!」
「ありがとう。そしたら、これを運んでくれる?」
「任せてください!」
亜子さんから受け取ったのは、ミートソースのパスタ。久しぶりだ、亜子さんの料理。