願い婚~幸せであるように~
「んー、納得できないけど、無理強いも出来ないよね。俺としてはふたりの距離を縮めるためにもいいかなと思ったけど」


私たちの距離を縮めるために……結婚を決めてもぎこちない感じがあるのは、私の話し方が固いのが原因のひとつではある。

でも、そんな簡単に親しみをもって話せないし、呼び捨ても出来ない。


「ごめんなさい……」


彼の要望に応じられないのは、私自身の問題。申し訳なくて、肩を落とす。


「謝らないで。困らせることを言って、ごめんね」

「いえ、幸樹さんこそ謝らないでください」

「うん、幸樹さんって呼ばれるのも悪くないね。新鮮だし。俺は、和花って呼んでもいい?」

「あ、はい。お好きなように呼んでください」

「そこは許してくれるんだね。ありがとう、和花」


自然に『和花』と呼ばれて、私も新鮮な感じがしたけど、それよりも心臓が大きく揺れたので胸の辺りに手を置く。

呼び方を変えるだけで、距離が変わるかどうかは謎だけど、見方は変わる。かっこよくて、信頼できる人とは思っていたが、そこに期待が加わった。

この人と結婚したら、楽しい生活が過ごせるのではないかという、期待に胸がふくらむ。現実味が全然なく、どこか他人事のように思っていた結婚準備だったが、少しだけ実感が沸いてきた。
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