願い婚~幸せであるように~
「おい、すみれ。和花は俺のとこで寝るから」

「ちょっと、お兄ちゃん! なんでいつの間に和花と呼び捨てにしてるのよ。ずるい」


すみれちゃんは不満気に顔を歪めた。


「結婚するんだから、呼び捨てになんの問題もないだろ」

「まあ、そうだけど。じゃあ、和花ちゃん。私も呼び捨てにしていい? 私のこともすみれって呼んで」

「うん。いいよ」

「わあ、ありがとう! 和花ー」


喜ぶすみれがいきなり抱き付いてきたから、私の体は後ろに揺れる。幸樹さんがそっと背中を手で支えてくれた。

私は彼の方にちらっと顔を向けて、小さく頷いた。ありがとうの意味を込めて。


「ねえ、和花。お兄ちゃんのことはなんて呼んでるの?」

「幸樹さん」

「やった、私の方が勝ってる。お互いに呼び捨てだものねー」


幸樹さんに対して、どんな対抗心を持っているのだかと苦笑する。でも、すみれと仲良くできるのは嬉しい。

リビングにいたご両親に挨拶してから、二階にあがるが、なぜかすみれも幸樹さんの部屋まで付いてきた。

茅島家には、一階にバスルームがあって、それぞれの部屋にシャワールームがあるそうだ。そこで、すみれに訊かれる。

バスルームで入るか、シャワールームにするかと……。幸樹さんの部屋のシャワールームを借りるのは、かなり恥ずかしい。
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