願い婚~幸せであるように~
長湯してしまったから、顔が火照っていた。冷たい水がとても美味しくて、気持ちよい。


「そうだ。カタログを持ってきたんです。見ますか?」

「カタログ? ああ、家具の?」

「はい。うちの社で扱っているものなんですけど」


持ってきたカバンから一冊のカタログを取り出して、再び幸樹さんの横に座る。彼はよく見ようと、先ほどよりも体を寄せた。微かに肩と膝が触れる。


「今日マンションを見て、私がイメージしたのは、このあたりでして……あ、これ。これ、どうでしょう?」

「ほー、いいね! うん、これにしよう」

「あ、一応他のも見ます?」

「いや。和花はこのカタログの中でこれが一番いいと思ってるんだよね?」


もちろん私はカタログの商品を熟知している。だから、よいところを説明した。幸樹さんは、私が選んだものに間違いはないと賛成してくれた。

ダイニングセットとソファセットはすぐに決定する。あとは寝室のベッドがあれば、暮らせる。

そのベッドを決めるために、私はここに来た。


「そろそろ寝ようか?」

「はい、そう……ですね……」


ぎこちない返事をして、手を繋いで寝室に入った。目の前には、どーんと構えたベッドがある。目がキョロキョロといろんな方向に動いてしまう。

やはりこのお試しは心臓によろしくない。動揺する私の背中を軽く叩いてから、幸樹さんは先に横になった。そして、「おいで」と呼ぶ。
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