願い婚~幸せであるように~
小走りで出ていく姿を見送ってから、川中さんと顔を合わせた。課長の体調も心配ではあるが、より心配なのはプレゼンだ。


「すぐ戻られますかね?」

「どうだろうな。最悪俺たちだけでやることになるかも。平原さん、課長部分も出来る?」

「一応頭には入ってはいますが」

「じゃあ、頼むよ。急だから大変だろうけど、落ち着いてやろう」


最悪の状況を覚悟して、さらに念を入れて流れを確認する。


「では、時間になりましたので、始めさせていただきます。進行は私森村が行います」


私と同じくらい年齢である森村さんが立って、開始の挨拶をした。加藤さんと同じグループにいる森村さんとは電話で話をしたことがある。

いつの間にか幸樹さんも私の予想した席に着席していた。中野課長のことに気を取られていて、入ってきたのも気付かなかった。

森村さんが改めて今回のコンセプトについて、話そうとした時、ドアが開いた。

課長が戻ってきた!と思ったが、そこに現れたのはここにいる誰もが予想していない人物だった。

「社長!」とマイク越しに森村さんの驚きの声が響いた。驚いているのは森村さんだけではないが、社長は平然として入室してきた。


「中断させてしまって悪いね。このコンペに興味があったから、後ろから見させてもらうよ。私のことは気にしないで、続けて」
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