ママの手料理
「そうですよね。まあ、最初は驚くかもしれませんけど、慣れると結構平気になってきますよ」


彼女はそう言って、小さく笑いながらハンドルを切った。


「というか、琥珀さんが仕事に行く最中にこうやって寝るなんて滅多にないんですよ。私は琥珀さんとペアなので何かと一緒に仕事をする事が多いんですが、彼は1週間寝ないでほとんど飲まず食わずでも生きていけるくらいメンタルが強いんです」


そのまま席に座り直した私の耳に届いたのは、私には到底真似出来ない琥珀さんの1面。


「え!?」


思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、私は慌てて口を押さえた。


それ程、警察官という仕事は大変なのだろう。


睡眠時間を削ってまで仕事や捜査をする彼の姿は何となく想像出来るし、この短期間の間で琥珀さんがコーヒー以外のものを口にしているのを見た事がないから、まあ納得は出来る。


私がそれとなく頷いていると、


「…それなのに、こうして寝ちゃうなんて…。今回の丸谷さんの事件の捜査で相当疲れてたんですね、彼も」


中森さんはバックミラー越しに眠っている琥珀さんを見やり、大きく息を吐いた。
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