ママの手料理
彼は、励ましているのか良く分からない言葉を紡いだ。


「はい………」


私は真正面を見ながら真顔で頷いた。


早い段階でこんな事を聞いた私も悪いけれど、もう笑顔になる理由も見つからない。


だから、私はてっきりこの事件の解決は随分先だと思っていた。



赤信号で引っかかる毎にちびちびとコーヒーを口にする琥珀さんと私が家に帰ったのは、もう日が沈んだ頃だった。


「おかえりー!」


私達を出迎えてくれたのは湊さんで、その声に釣られる様にリビングに入ると、


「え、……?」


ソファーの上に、冬用の洋服が所狭しと並べられていた。


しかもそれは全て女性もので、デザインも可愛らしくて。


「お帰りなさいませ、紫苑様。…あの、今日ショッピングモールに行って、紫苑様がお気に召す様な洋服を選んで購入してみたのですが……。どうでしょうか、?」


「私の………?」


「は、はい」


そう言う笑美さんは、いつものエプロン姿の上から今流行りのピンク色のボアジャケットを着ていて、良く良く見れば私のものと思われる服の中にも白いボアジャケットが置かれていた。


「あ、これ!私が欲しかったボアジャケット!」


私は思わずソファーに駆け寄り、ふわふわなそれを抱き締めた。


車の中で一切笑わなかったのに、嬉しくて笑みが零れる。
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