ママの手料理
湊さんと伊織さんの会話に心のこもらない相槌を打った彼は、大声で伊織さんを呼び付けた。


「ボアジャケット?…わー、それは嬉しいなぁ!俺そういうの欲しかったんだよね!ありがとう!」


伊織さんは、満面の笑みを浮かべて大也さんからボアジャケットを受け取ると、ありがとー!、と私達に手を振りながら2階へ上がって行ってしまった。



大也さんがねだっていたにも関わらず、私達の前でボアジャケットを試着せずに。




「紫苑ちゃん何飲みたい?今ならタピオカ無料だよ」


「……タピオカミルクティーMサイズがいいです」


「はーい」


あれから早くも10日が経った。


そして、怒涛の様に色々な事があった。


まず、2度も家族を亡くしたショックから精神面が人より不安定になっているという診断を医師から受けた私は高校を退学し、航海が使っている問題集を借りて少しずつ勉強を始めた。


また、航海の他にも大也や伊織や銀ちゃん、そして琥珀等、呼び捨てで名前を呼んだり、敬語を使わないで話せる程打ち解けた人も居る。


銀ちゃんは、あの日以来大也や仁さんから呼ばれ続けている銀子ちゃんというニックネームを自己流に変えたものだけれど。


そして、琥珀や中森さんとの事情聴取は今も続いていて、その度に私は思い出したくないあの光景を思い出している。
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