ママの手料理
私は心配症な彼に向かって笑顔で頷くと、大也のスマホを反対側のポケットに入れた。


「分かった。行ってくるね」


「気を付けてね、行ってらっしゃい」


私が玄関を閉める直前まで、


「大也何処ー!」


と叫ぶ、仁さんの大声が聞こえていた。





「大也ー……?」


(此処曲がったっけ……?うん、そうだこの家の横を曲がったんだ)


あの公園は、あの日以来訪れていない。


だから、ああやって湊さんには言ったものの、実際は自分の記憶に自信が無かった。


あの日は裸足で寒くて、しかも家族を失ったショックで、何処をどう歩いたかなんてきちんと覚えていない。


それでも、きっと大也はそこに居る。


(そういえば、あの時も…)


辺りをぐるりと見回しながら、私は回想する。


あの日、彼と初めて出会った日、彼はあの公園で“考え事”をしていた。


家族からの大量の連絡に既読も返信もしないで、彼は何を考えていたのだろう。


子供でも無いのに少し錆び付いたブランコを漕いで、真っ暗な空を見上げて、何を思っていたのだろう。


(大也、何処にいるの?……それからこの道、どっちに曲がるんだっけ?…多分右だよね、うん)


私は自分に自問自答しながら、必死に正しい道を探して進んで行った。
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