ママの手料理
「仁さんが騒いでたよ。後、琥珀は大也が帰って来ないから飲み物が飲めなくて、何か色々言ってた」


私はそう言いながら、隣のブランコに腰を下ろした。


ブランコは氷の様に冷たかった。


「……そっか、」


大也はそう呟き、目を伏せた。


彼の長いまつ毛は濡れていた。


「……ねえ、大也」


「ん、」


彼の声は心做しか震えていて、とても“帰ろう”とすぐに言える空気ではなくて。


だから、私は代わりに言葉を紡いだ。


「何かあったの?」


「えっ、」


彼の持つコンビニの袋がカサカサと音を立てる。


「……何かって、?」


「え、何で私に聞くの?…何か分かんないけど、大也がいつもより暗い気がして心配になっただけ」


冷たい風が頬を撫で、一瞬で鳥肌が立った。


「……んー、そっか。…そんなに今俺暗いの?」


もう、あからさまに声のトーンから低い。


それを伝えると、


「えーまじか……。こんなんじゃ家帰れないじゃんね。紫苑ちゃん先帰ってて良いよ。てか先帰りな?皆から心配されちゃうよ」


私が必死で記憶を呼び覚まして此処に来た意味が無くなる答えが返ってきた。


「えっ?いや何言ってるの、一緒に帰ろ」


一応そうは言ってみるものの、彼が簡単にここから動かない事は何となく察していた。
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