ママの手料理
その途端、初めて彼がこちらを向いた。


その反動で、彼の目から一滴の涙が零れ落ちて地面に染み込む。


この言葉は、あの日彼が弱り切った私に向けて言ってくれたものだ。


この言葉や“信じて”という単語に、私がどれ程救われた事か。


「大也、大丈夫だから。…私を信じて」


もう1度、念を込めるように私が口を開くと。



「…………引いていいから。気持ち悪いなこいつって思ったら帰っていいからね、」


少しの間を空けて、決心を固めたらしい彼は震える声を絞り出した。



「………俺さ、好きな人が居るんだけどね、」


「…それ、今日伊織から聞いたよ」


まさか自分から私が気になっていた話題に触れるとは思わず、私は内心驚きながら口を開いた。


「……伊織、何処まで話してた?」


「好きな人が居るって所しか聞いてない」


「…………そう」


彼の口調は依然として暗いまま。


「…俺の、好きな人はね、…………」


そこで、彼は顔を両手に埋めた。






「…………男……なんだ、」






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