ママの手料理
そして、まるで人が変わったかのように先程とは打って変わって淡々と自分の考えを言葉にしていく彼の声に、私はじっと耳を傾けた。


私を産まなければ、私が狙われていると分かった時点で私を捨てるなり養護園に預けるなりしていれば、私の両親は殺されなくて済んだ。


けれど、彼らはそれをしなかった。


もしかしたら、航海が言った事が本当に彼らが考えていた事なのかもしれない。


「…それに、琥珀さんが言っていたと思うんですけど、谷川家も紫苑さんのそういう事情について知っていたんですよね?それでも谷川家が紫苑さんを養子に引き取ったのは紫苑さんをどうしても家族にしたかったからで、一緒に幸せを分かち合いたかったから」


「……」


(あ、……そうだったの、かな…?)



最初こそ、私は谷川家を家族として見ることが出来なかった。


兄弟達は皆私よりもずっと歳が離れていて、谷川家の両親は私の本当の両親と性格が正反対で、慣れるのに時間がかかった。


それでも彼らが私を家族の一員として愛してくれているのは伝わってきたし、私も彼らに思う存分甘える事が出来た。


本当の家族の様に喧嘩もしたし、沢山一緒に笑った。


それに気付いた今、私は自分の目頭がどんどん熱くなっていくのを感じた。
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