ママの手料理

優しい口調の裏に少しからかいの様な響きを含みながら、仁さんは私に笑顔を向けてきた。


｢っでも、これは私の復讐なのに！｣


理不尽すぎる、こんなんじゃ…私が行かなきゃ、私の家族は報われないじゃん！、と、頭の中で強く思った次の瞬間。


｢…これはお前だけの復讐じゃねえ。俺の復讐も含まれてるんだ｣


耳を塞ぎたくなるほどの恐ろしい威圧感と共に、ずっとこの会話を睨みながら聞いていた琥珀が口を挟んだ。


｢…へ、？｣


何を言っているのか全く分からずぽかんと口を開けてしまった私をよそに、琥珀はいかにもだるそうにしながら下唇を舌で舐めた。


｢2年前…俺が21歳の頃だ。あくまで警察官として、俺は他の奴らと一緒にOASISの麻薬取引現場を押さえる為に取引場所に行った。そこで警察対OASISの抗争が始まった時、俺は誰かに右腕を深く切られた後に同じ場所に銃弾を撃ち込まれた｣


初めて聞かされる琥珀の動かない右腕の真実に、私は目を見開く事しか出来なかった。


想像するだけでも痛そうで、それを乗り越えた琥珀はどんな気持ちだったのだろう。


｢あの時の抗争で、警察側で重症だったのは俺1人。しかも俺の神経はやられ、俺は自分の意思でこれをほぼ動かせなくなった。…そいつのせいで｣