ママの手料理
航海が、いつもの様に大也をゲームに誘った。


「あーいや、俺ちょっと用あるから先に部屋戻ってる。ごめんね、明日戻ってきたらやろう!」


けれど、夕飯が終わって速攻で部屋に戻ってしまった琥珀の後を追うように彼がリビングのドアを閉めたのを見て、私は忘れかけていた昨夜の出来事を思い出した。


(あ、そういえば大也、琥珀に告白するんじゃん!)


夕飯後に告白すると言っていたから、大也はきっとリビングから直行で琥珀の部屋に向かうのだろう。


(うわあどうしよう、着いて行っていいかな!?)


大也は表情にすら見せていないけれど、心の中では物凄く緊張しているはずだ。


そんな彼の手前、ここで変に騒ぎ立てたら一生恨まれるに決まっている。


テーブルに向かって座っていた私は、中腰になりながらそっと周りを見渡した。


湊さんは笑美さんといつも通り洗い物をしていて、姿の見えない銀ちゃんはきっとお風呂に入っていて、伊織はソファーに座ってスマホとにらめっこ、壱さんはそんな伊織の膝に両足を乗っけてソファーの上で横になり、航海は1人でビデオゲームをしている。


(よし、行こう!)


そーっと音を立てないように立ち上がった私は、リビングのドアの方に足を1歩踏み出した。


その瞬間。


「よし、行きますよ紫苑さん!」


テレビに一時中断の文字が大きく映し出され、興奮気味の航海が勢い良く立ち上がった。
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