へたれライオン 卒業します
直哉先輩と公園で会うと
先輩がうつむきながら話し始めた



「実は
 俺の新しくお母さんになる人が
 春名のお母さんなんだ」



「う・・・うそ?」



「実は俺
 かすみんがこの学校に入った時
 明美さんからお願いされたんだ」



「お母さんから?何をですか?」



「花純のことが心配だから
 陰ながら支えて欲しいって」



「そ、そんなの嘘ですよ
 お母さんが私を心配するはずない

 だって離婚する前に
 お父さんと話してたんです

 私は出来ちゃった子で
 本当は二人とも結婚する気がなかったって

 子供なんて欲しくなかったって

 それに
 どっちも子供がいる人と再婚するから
 私とは暮らしたくないって感じで
 押し付けあってたし」



「それは喧嘩で興奮してて

思ってもないこと言っちゃったんだよ」



「それに・・・
去年も今年も
誕生日でさえお母さんから連絡なかったし」



「それはごめん・・・

 俺の妹のせいなんだ 」



「直哉先輩の妹さん?」



「妹の凛は
 産まれてまもなく母親をなくしたから
 明美さんがお母さんになってくれるかもって
 喜んでたんだ

 だけど明美さん
 俺や凛の前で
 かすみんのこと喜んで話したり
 心配したりするんだよ

 だから凛は
 かすみんに嫉妬してる

 誕生日に明美さんが
 かすみんに送ろうとしたプレゼントを
 『私が送ってあげる』っていって
 送らなかったんだ

 俺は凛が不憫だったし
 明美さんのことを好きなことも知ってたから
 見て見ぬふりをしてた

 でもそれで
 かすみんが傷ついてることを知って・・・

 かすみん
 申し訳なかった」



「じゃあお母さん・・・
 
 私のこと嫌いじゃないの?」



「明美さんはかすみんのこと
 大好きだよ」



「誕生日にプレゼントを
 用意してくれてたの?」



「うん
 今俺が預かってる」



「でも
 まだお母さんのことが信じられない・・・」



「明美さんが
 俺たちと一緒に暮らしてるのに
 親父と再婚してないのって
 なぜかわかるか?」



そうだ
お母さんはまだ再婚をしていない



「かすみんが
 笑顔で『おめでとう』って言ってくれるまで
 再婚はしないって言ってる

 かすみん!
 お母さんにメチャクチャ愛されてるぞ!」



その夜
お母さんが電話をくれた



お互いに誤解をしていたこと
本当は私が大切で
ずっと心配してくれていたことを知った



「花純、お母さんね
 直哉さんのお父さんと
 再婚しようと思うの」



「お母さんが幸せなら
 それでいいと思うよ」



「本当に?

 花純、ありがとう・・・

 もしよかったら
 花純も一緒に住まない?」



「え??

 私も??」



「直哉さんから
 学校で花純が辛い思いをしたって聞いたわ

 だから高校も
 転校すればいいと思うの」



「急すぎて・・・

 どうすればいいか・・・」



「ゆっくり考えて
 決めてくれればいいから」



私はもう
怖い思いをしたあの学校へは
足を踏み入れられないだろう



高杉くんと咲姫さんが
一緒にいるところも見たくない



「お母さん・・・

 私・・・

 転校してお母さんたちと住むよ」



今の場所から逃げるため
私は転校することを決めた
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