へたれライオン 卒業します
(花純side)

「私、明日
 転校届けを出そうと思ってるの」



「え?明日」



「そう・・・
 お母さんが一緒に暮らそうって
 言ってくれたの

 私はもう
 あの高校には
 行けそうにないんだ」



「・・・」



「奏多くんから聞いた?

 私が学校に行けなくなった理由・・・」



「うん」



「普通に生活しているだけなのに
 急にあのときの恐怖が
 襲ってきたりするの

 一日に何十回もだよ
 もう、病気だよね・・・

 学校での
 楽しかったことを思い出したいのに
 学校って思うだけで
 あの時の恐怖が襲ってくるの

 もう・・・

 あの学校へは行けないから・・・」




「実は俺
 ずっと春名に謝りたいことがあった」



「謝りたいこと?」



「春名の机の中に
 ウサギのクッキー入れたの・・・

 俺なんだ・・・」



私は
ビックリして目を見開いて
固まってしまった



「俺は
 1年前の公民館で
 春名に会ってから
 ずっと春名のことが好きだった」



「え?」



「だからあの日
 理科室で春名を待ってたんだ

 来てくれたと思ったら嬉しかったのに
 オレ緊張しちゃって
 何も話せなくて・・・

 春名が来てくれたのに
 あのまま理科室に残して
 本当に悪かった」



ウサギのクッキーをくれたのは
高杉くんだったんだ!



それを聞いて
私の心がジーンと温かくなった



「俺、咲姫とは別れたんだ

 付き合ったのだって
 脅されて付き合ってただけで
 全く好きじゃなかった

 俺は
 1年前からずっと
 春名のことが好きです

 俺と
 付き合ってください」



信じられない・・・

高杉くんが私のこと好きだなんて・・・

嬉しい・・・

嬉しいのに・・・



「学校だって
 転校してほしくない

 卒業までずっと春名と一緒にいたい」



「ごめんなさい

 あの高校に行くのは
 本当に無理なの」



「学校も、行き帰りも
 俺がずっと隣にいる

 俺が一緒にいれないときは
 白川に頼んでそばにいてもらうから」



「雪ちゃんにまで
 迷惑かけれないよ」



「それに
 学校での嫌な思い出を消し去るくらい
 俺が学校で
 楽しい思い出を一杯作ってやる

 今度の文化祭で
 春名のためにステージで
 歌を歌ってもいいし」



私は思わず
アハハと笑ってしまった



「恥ずかしすぎて
 余計学校に行けなくなっちゃうよ」


あ!
声を出して笑ったの
誕生会以来だ



私まだ、笑えるんだ



高杉くんなら
私の辛さを和らげてくれるかもしれない



「でも・・・

 ごめんなさい・・・」



「じゃあ

 明日俺とデートしてくれない?

 誕生会のお詫びに
 春名が楽しめること考えるから

 それで
 最後に一緒に学校に行ってみよう

 どうかな?」



「・・・わかった」

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