この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 言い終えるか言い終えないかのうちに内心自分に突っ込みを入れてしまった。

 いや、他人に認められてる嫁なんだけど!
 ……嫁なんだけど!

 ローデリヒさんはびっくりしたように目を少し見開いたが、口元を上げた。


「ああ。ありがとう」


 多分今は深夜に差し掛かってる時間帯だろう。王太子の仕事ってやっぱり忙しいのか……。
 途端に降ってくる沈黙に何とも言えない気持ちになった。

 ……あ、あれ?!今までどうやって話してたっけ?!

 思い返してみると、ローデリヒさんと言葉を交わしたのはそう多くなかった気がする。

 オマケに離縁してもいい、なんて言われてるものだから、どうすればいいのこれ。


「吐き気はどうだ?今は落ち着いているのか?」


 眉間に皺を作りながら、眉尻を下げたローデリヒさんは私の顔を覗き込む。


「えーっと、今は大丈夫みたいです……」
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