この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 食べられるうちに食べておこうと、ナイトテーブルに乗ったビスケットを口に入れた。


「それならば良かった……。楽に越したことはないからな」


 ホッとしたように息を吐いたローデリヒさん。よく見たらお風呂上がりなのか、髪の毛がまだ濡れている。


「ローデリヒさん、髪の毛濡れてますよ?」

「ん?……ああ、すぐに乾く」


 髪の毛を指先で摘んだ彼は、結構大雑把な反応をみせる。男の人ってこんな感じなのかな……?


「生乾きで寝ちゃうと風邪引きますよ?」


 ビスケットと共に、何かあった時用のタオルを常備してくれていたゼルマさんに感謝だ。ベッドサイドに腰掛けるように促して、私は立ち上がる。

 何やら分からない顔をして座っているローデリヒさんは、眉間に皺を寄せてる時と違って年相応に見える。

 ……なんて、彼を見下ろして、私はタオルを抱えたままふと我にかえった。

 ローデリヒさんの髪の毛をタオルドライしようとしたけど、触って良いのかな?
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