この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「……分かった。だが、どこに避難させるつもりだい?」
「マンテュサーリ領の一番大きな修道院を予定しているつもりだよ。アリサの父親のマンテュサーリ公爵の目が届く所で、彼女に護衛騎士を多く付けられるような場所なんだ」
「随分と用意が良いんだな」
「いいや、修道院の下見はしてないよ」
部下に下見させて、自分はしていないからと飄々と嘘をつくルーカス。その様子におじ様は深く目を閉じて数秒考えた後に、「良いだろう」と許可を出した。
その様子が酷く疲れきっているように見えた。
二人揃っておじ様の部屋から退出する。人通りのない場所まで来て、ルーカスは声を弾ませた。
「これで後は僕とアリサの婚約破棄だけだ」
「そうね。ルーカスはちゃんとティーナにアプローチはしてるの?」
「う……。痛いところを突くね……」
何も無いのに胸を押さえて呻くルーカスに「ヘタレ」と揶揄う。冗談交じりにルーカスはひとしきり笑った後、急に真剣な顔つきになった。
「でも本当にいいのかい?僕とアリサが婚約破棄をして、アリサが修道院に行ってしまえば、きっと社交界の人間は下衆な噂が本当だと思ってしまう。もうまともな結婚は出来ないようなものなんだよ?」
何度も念押しされた。ティーナにも引き止められた。でも、私は笑って頷く。
「いいよ。だってここは――……」
「マンテュサーリ領の一番大きな修道院を予定しているつもりだよ。アリサの父親のマンテュサーリ公爵の目が届く所で、彼女に護衛騎士を多く付けられるような場所なんだ」
「随分と用意が良いんだな」
「いいや、修道院の下見はしてないよ」
部下に下見させて、自分はしていないからと飄々と嘘をつくルーカス。その様子におじ様は深く目を閉じて数秒考えた後に、「良いだろう」と許可を出した。
その様子が酷く疲れきっているように見えた。
二人揃っておじ様の部屋から退出する。人通りのない場所まで来て、ルーカスは声を弾ませた。
「これで後は僕とアリサの婚約破棄だけだ」
「そうね。ルーカスはちゃんとティーナにアプローチはしてるの?」
「う……。痛いところを突くね……」
何も無いのに胸を押さえて呻くルーカスに「ヘタレ」と揶揄う。冗談交じりにルーカスはひとしきり笑った後、急に真剣な顔つきになった。
「でも本当にいいのかい?僕とアリサが婚約破棄をして、アリサが修道院に行ってしまえば、きっと社交界の人間は下衆な噂が本当だと思ってしまう。もうまともな結婚は出来ないようなものなんだよ?」
何度も念押しされた。ティーナにも引き止められた。でも、私は笑って頷く。
「いいよ。だってここは――……」