この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
アーベルが大変な事になっていたら、どうしよう。
15年後の王城の造りが今と変わっていて、迷ってしまったと無事に姿を見せる想像をして。
何にもできない自分が嫌になった。
「――ま……奥様、……奥様」
後ろから侍女に腕を掴まれてハッと我に返る。いつの間にか、後宮の入り口まで来てしまっていた。
国王様の執務室から距離はほぼ離れていないから、国王様の後宮。
アーベルの事で頭がいっぱいで、人の声がずっと頭を巡っているのに、少しも気にならなかった。周囲もよく見えていないくらいだった。
後宮へは入れない事もないけれど、王太子妃である私は入らない方がいいと思い、クルリと侍女達の方へと振り返る。
謝ろうと口を開いた瞬間、私の背後から声が掛かった。
「……あら?貴女、新入りかしら?」
侍女と共に声の主の方へと顔を向ける。
第一印象は――全体的にインパクトが強い、だった。
赤いリップが綺麗に引かれ、黒目がちな瞳の周りには長いまつ毛。側頭部の髪を後ろに複雑に結い上げ、キラキラ髪飾りをふんだんに使っている。ワインレッドのドレスは、かなりのボリュームがあった。
このままどこかの夜会に行けそうな、そんな豪華な装い。
二十代半ばから後半くらいの女性は、私のことを頭からつま先までジッと値踏みするように見る。
15年後の王城の造りが今と変わっていて、迷ってしまったと無事に姿を見せる想像をして。
何にもできない自分が嫌になった。
「――ま……奥様、……奥様」
後ろから侍女に腕を掴まれてハッと我に返る。いつの間にか、後宮の入り口まで来てしまっていた。
国王様の執務室から距離はほぼ離れていないから、国王様の後宮。
アーベルの事で頭がいっぱいで、人の声がずっと頭を巡っているのに、少しも気にならなかった。周囲もよく見えていないくらいだった。
後宮へは入れない事もないけれど、王太子妃である私は入らない方がいいと思い、クルリと侍女達の方へと振り返る。
謝ろうと口を開いた瞬間、私の背後から声が掛かった。
「……あら?貴女、新入りかしら?」
侍女と共に声の主の方へと顔を向ける。
第一印象は――全体的にインパクトが強い、だった。
赤いリップが綺麗に引かれ、黒目がちな瞳の周りには長いまつ毛。側頭部の髪を後ろに複雑に結い上げ、キラキラ髪飾りをふんだんに使っている。ワインレッドのドレスは、かなりのボリュームがあった。
このままどこかの夜会に行けそうな、そんな豪華な装い。
二十代半ばから後半くらいの女性は、私のことを頭からつま先までジッと値踏みするように見る。