この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 そして、私は今の自分の状況を確認した。
 私は後宮に背を向けるようにして、侍女と向かい合っている。侍女の一人は私の腕を掴んで、もう一人も私を囲むように立ち、決して穏やかな雰囲気ではない。


「ふうん。大方、後宮から逃げようとして見つかったのでしょう?」

「え、ちが……」

「馬鹿ね。後宮からは逃げられないわよ」


 事情は全く違うのだけれど、何故か女性は私が後宮の外に出ようとしていると思ったらしい。後宮の入口には近衛騎士が二人立っていて、その人達が本来止めるのであろうが――侍女に止められていると勘違いした女性は、目を細めて私を見た。


「ねえ、こんな事していないで、わたくし達と楽しいお茶会でもしましょうよ」

「え、いや――……」


 咄嗟に断ろうとして、私はその先の言葉を続ける事が出来なかった。


 ――王太子を失脚させるのに協力してくれる家は、多ければ多い程良いわ。


 そんな、女性の心の声が聞こえたから。
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