この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 轟音と共に男に稲妻が直撃する。時空属性の魔法と共に発動したそれを流石に避けきれなかったようで、頑丈であるはずの近衛の隊服が所々破れた。白い肌には血が滲んでいる。

 魔法を発動する。
 扉に近付いたが、即復活した男の蹴りが飛んでくる。アーベルは部屋の奥に戻らざるを得なかった。

 密室という事が災いして、扉を開けるタイミングや窓を開けるタイミングで、時間切れになる。それと同時に、男はアーベルの動きを遮ろうとしてくるので、ほぼノータイムで反撃をしているという事だ。

 流石は近衛騎士、いや、光属性の一族と言うべきか。


「なるほどなるほど……。合わせ技ね……。戦闘向きじゃねぇけど、それなりの魔法使いって感じかぁ。…………光属性魔法といい、その顔といい、これは、ますます野放しには出来ねぇ〜なぁ?」


 この男の光属性魔法は強い。あまりキルシュライト王家から離れた血筋ではないだろう。キルシュライト王家の親戚は、ゲルストナー公爵家とヴォイルシュ公爵家のみ。ゲルストナー公爵家に子供がいるとは十五年後も聞かないので、おそらくヴォイルシュ家の人間……のはず。


「今更陛下に隠し子がいましたってなると、すっげえ大事になりそ〜。しっかし、ローデリヒよりも光属性魔法得意じゃあなさそうだし、王太子の座は無理そうだよなぁ」
< 402 / 654 >

この作品をシェア

pagetop