この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ジロリ、と青空のような碧眼で見られて、私はその場で居住まいを正した。ローデリヒ様は手のひらで顔を覆う。


「引きこもって元気がないのもあまり良くはないが、元気すぎるのも目が離せないな……」

「ちょ……、私はアーベルみたいに子供じゃないですよ!」

「そうだな。むしろアーベルよりも動ける分質が悪い」


 グッと言葉に詰まった。今回は危ない事をした自覚はあるので、大人しく黙る。確かに気になっていても、軽率ではあったと思う。ローデリヒ様はわざわざ立ち上がって、私の隣に腰を下ろした。


「……私の事で動いてくれたのは分かるから、あまり責めたいわけではない。が、貴女に何か起こると私は辛い。一人の体でない事を自覚してくれ」

「はい……」

「危ない真似はしないと約束、してくれるな?」


 ローデリヒ様が小指を立てた。男の人らしく小指なのに大きくて、骨ばっている。私は彼の指に自分のを絡めた。
 実はこの世界にも、指切りに似た風習があるんだよね。家族にしかやらないらしいんだけど。


「約束です」
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