この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ローデリヒ様が即時に真顔で否定をする。だが、国王様は困ったように頬をかいた。


「それがの、ずっと外で待機しとるんじゃ」

「は?」


 完全にローデリヒ様の選択権が無くない?眉間に深い皺を刻んだローデリヒ様に構うことなく、国王様は(くだん)の側室さんを部屋の中に入れる。

 赤髪の女の子。私と同世代くらい。
 既視感があると思ったら、ハイデマリー様に連れて行かれたお茶会で隣に座っていた子だ……。不審な動きをしてたから覚えている。何故か騎士にガッチリ両側を固められているけど。


「待ってください父上。私は会うとは言っていません」


 ローデリヒ様は地を這うような低い声を出した。起き上がって私と赤髪の子の間に入る。ややふらついていたので、慌てて支えた。


「殿下……、ご存命で良かったです……」


 女の子は心底ホッとしたように、ローデリヒ様の姿を見てしみじみと言う。


「いやいや、勝手に殺しちゃダメだって!」


 何言っちゃってんの?!


「生きてはいるが、無事ではない」


 苦々しく答えたローデリヒ様は、とても今更な問い掛けを赤髪の子に投げかけた。


「それよりも、お前は誰だ?」

「……ティベルデ・フェルナンダ・キュンツェルと申します」

「……キュンツェル子爵家の縁者か」


 名前でなんとなく納得したらしい。それを確認した国王様はニヤリと笑って口を開いた。


「彼女が洗いざらい吐いてくれたんじゃ。ローデリヒが死んだと勘違いしてな」

「……そうですか」
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