この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ゲルストナーは遠い目を、エーレンフリートは軽い調子で応える。


「ハイデマリーは……、3ヶ月間の謹慎じゃ。後宮で大人しくしておれ」

「分かったわ」


 ハイデマリーへの罰に文句の声を上げたのは、エーレンフリートとゲルストナーだった。


「え〜!ハイデマリーさんだけずっりぃ!」

「依怙贔屓じゃないですか?!」


 国王に詰め寄る二人を横目で見て、ハイデマリーはうんざりとしたように肩を竦める。


「後宮に軟禁状態よ?息が詰まりそうだわ」

「……ほぼいつもの事じゃね?」


 基本的に側室は後宮から出ることは無い。そんな当たり前の事を続けるだけなのに、何故息を詰まらせているのかと、エーレンフリートは眉をひそめた。
 その流れを切るように国王はわざとらしく咳払いをする。


「いつまでも遊ぶのではない!さっさと仕事に戻るのじゃ!ワシの分まで働くのじゃ!」


 騎士に命じ、縛られたままのエーレンフリートとティベルデを連れて行かせる。エーレンフリートが納得いかないと、ワーワー文句を言っていたが、国王は完全にスルーした。

 ゲルストナーは眼鏡を押し上げて、騎士達の後に続く。大人しく退出するふりをみせていた。しかし、国王とすれ違いざまに、唇を動かす。


「べティーナ様の事で懲りておられないのですか」


 小声だった。国王にしか聞こえないような声。
 それは絶対君主制のこの国で原則許されていない、国王を非難する、声だった。
 そのままゲルストナーは部屋から出て行く。国王の返事なんて求めてはいなかったのだろう。
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