この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 思わず目を瞬かせるヴァーレリーに、ローデリヒは難しい顔をして腕を組む。なんと言葉にすればいいか、しばしの間言いあぐねている様子を見せたが、気まずそうに口を開く。


「……どうやら、故郷の友人を思っているらしい。昨夜寝苦しかったらしく、うなされていてな。寝言で友人の事について話していた」

「故郷の、友人ですか……?」

「ああ。今まで友人については聞いた事がなかったが、妊娠中は気分の浮き沈みが激しい。会いたくなったのだろうが……、隣国のアルヴォネンは距離も離れている。呼び寄せてもそんなに滞在日数は取れまい。そう頻繁に会えるわけでもないから、友人になってやって欲しいのだが……」


 それまで静観していたイーヴォが呆れた声で口を出した。


「殿下……。絶対友達作った事ないですよね?」


 顎に手を当てて今までを振り返る。友人とはどういう風に作っていたか、と考えてローデリヒは気付いた。


「……言われてみれば、まず私に友人は居ない」

「友人がいない……?!俺は?!……っていうか、以前通っていた学園に沢山ご学友いらっしゃいましたよね?!」

「お前は乳兄弟だ。学園の人間はほとんどがビジネス関係だろう?将来の部下か、ビジネスパートナーか。敵対関係にもなるかもしれない。そんな相手に情を移すのか?」

「割り切り方が素晴らしいですね。というか、ほとんどの人が殿下のご学友になれたと喜んでそうなんですけどね……!かわいそう!」
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