この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「どうした?乾いていなかったか?」

「……いや、ローデリヒ様の魔法が便利だなって複雑な気分になってました。キャンプ向きかも」

 髪の毛を弄っていた私を訝しげにローデリヒ様は尋ねる。遠い目になりながら答えると、「キャンプ向き……」と複雑そうな顔をされた。キャンプする時にローデリヒ様連れて行ったら便利だと思う。


「転移とかも使えるし、遭難しても助けをすぐ呼べるじゃないですか」

「そうだが……、転移は一人でしか使えないからな」


「やっぱりそう簡単にはいかないか……」

 みんな一気に転移出来たら良いのに……とは思うけど、そうなると馬車とか御者さんが必要なくなってしまうのか。それはそれで大変。みんな一気に転移出来てたら、とっくにこのココシュカの街ではなく離宮に居るだろうしなあ。

「……そういえば、私に慣れてきたと言っていたが……、確かに殴られる回数が目に見えて減ったな」

 そんな私が暴力女みたいな……いや、ボコボコにしてたから合ってた。カウンターは家庭内暴力にカウントされ……るよね。

 ……よく、この王太子様、私と離縁しなかったな……。
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