希空~空姫に希望を。~

外では無表情なんかを晒すことがない諷賀。


諷賀は徹底的に"優しいお兄さんキャラ"を演じているんだ。




理由は、大好きな憧れの兄に近づきたいから。



諷賀の兄貴はいつも笑顔で、よく諷賀んちに遊びに行くオレにも優しくしてくれるいい人だ。


そんな兄貴が大好きな諷賀は、兄に近付く為に兄のような態度をし、兄みたいになりたいが為に暴走族に入った。




そんな兄貴LOVEな諷賀でも、さすがにストレスは溜めきれないようで。


定期的にオレと2人の時にすごい暴言や愚痴を言うことで吐き出している。




2年以上の付き合いだから、最近は諷賀のストレスの原因になりそうな出来事がなんとなくわかるようになっていた。





「…なんであんなのが幹部候補な訳?」


静かに口を開いた諷賀。



昨日のことを思い出しているのか、視線はよくわからない方向を向いたまま。



「弓代と安城はそもそも希空にあんまり来てねぇじゃんか。

 なんでそんな奴が幹部に昇格できるんだよ」


オレは相槌も打たずに諷賀の顔を見続けたまま何も反応しない。



途中で反応したところで諷賀の愚痴は止まんねーし、諷賀自身も聞いてもらいたいだけでオレの反応は求めてないだろう。



オレはムカついた時に顔に出るし、そもそもその場で口に出してることの方が多いからよくわかんねぇけど、ストレスを溜め込むのはよくねぇことだと思うし。




「つーか、なにあのたっかい声。

 僕かわいい〜!とか思ってんのかよ。

 気持ち悪すぎ。

 暴走族に似合わねぇし、マジで不快」


次々とひどい言葉ばかり発する諷賀。



守唄さん、実際女みてぇな見た目だしな。


染めてない黒髪には顔の横に一筋のピンクの髪がメッシュで入ってるし。


わざわざピンクを選ぶ辺りかわいい系だと自覚してはいるんだろーな。




ま、幹部候補になるくらいだから力はそれなりにあるはずだけど。




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