希空~空姫に希望を。~

―むかしむかし、あるところに容姿端麗な少女がいました。



―道ですれ違う男が全員振り返ってしまうほどの美しさで、ある地域では有名な人でした。



―しかし、その少女には長年付き合っている彼氏がいました。



―だから周りの人は少女に見惚れることしかできませんでした。




――ある日のこと。


―少女は彼氏に呼び出され、とある倉庫に行きました。



―その倉庫は彼氏が所属している暴走族の本拠地で、少女は何度も出入りをしたことがありました。


―いつものように倉庫の中に入ると、彼氏は薄笑いを浮かべながら出迎えてくれました。



―違和感を覚えたときには既に遅く、倉庫のドアは閉ざされ逃げ道がなくなりました。




―数人の男がやってきて、少女を強引に押さえつけました。


―彼氏に助けを求めようとすると、彼はにやりと笑ってこう言いました。



―『総長方、遠慮なくヤッちゃってください。

 これで次期総長候補になれるなんて、最高っす!』





――少女はただただ絶望しました。





―ずっと大好きで、ずっと付き合ってきた彼氏に、総長という肩書きを手に入れる為の道具として扱われるなんて、想像もつきませんでした。




―解放される頃には、少女の瞳は真っ暗な闇に染まっていました。



―さらに追い打ちをかけるように、彼氏はこう言いました。


―『今日はありがとな。これで総長になれる』




―彼氏の目には満足感のみが浮かんでいました。





―長年付き合っていた彼氏は、少女の瞳の変化に気づくことはなかったのです。






―忌々しい倉庫から帰る途中、少女はメールと電話をしました。


―メールは、先程まで会っていた彼氏に向けて。



―別れを告げるメールを送り、すぐに連絡先を消去しました。





―電話の相手は、幼馴染であり親友のおっとりした男の子。


―今まで数えきれないほど相談をしてきた、彼氏とは別の意味で心を許していた人だ。





―『私、もう生きる希望がなくなっちゃった』



――『…今やりたいことは、何かない?』



―「元彼がいる暴走族を潰したい。

 私みたいな人をもう作って欲しくないの」






――電話が終わると、幼馴染の男の子は4人の人に連絡を取りました。



―少女を姫に迎えた暴走族を、少女の居場所を作ろうという内容でした。




―4人全員が快諾し、後日その族は"希望が(カラ)になった少女を助ける為の族"という意味を込めて、希空(キソラ)という名をつけました。






―そしてその族は一代で名が通るほどの力をつけ、代々受け継がれていく大きな族となりました。






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