先生の全部、俺で埋めてあげる。



…は?


なんなんだよ、分かんないって。


「里巳くんと一緒にいると、自分の感情が分からなくなるの。
どうすればいいか、私にも分からないの…!」


そう言って先生は一筋の涙を流した。




泣かないでよ、先生。


先生を泣かしたい訳じゃないのに。


どれだけ先生の涙を指で拭っても、全然止まらなくて。


俺だってどうすればいいか分からないよ…。




「俺も先生と一緒にいると、分からなくなる」


めちゃくちゃ好きなのに、不安でたまらなくて。


「自分の感情がどんなだったか分からなくらい、ぐちゃぐちゃになる」


多分それは。


先生のことが、どうしようもなく好きだから。




「先生は俺と一緒なの?」


「一緒…?」


俺が問いかけると先生の涙がピタッと止まった。




「先生は、たぶん俺のことが好きだよ」



< 235 / 338 >

この作品をシェア

pagetop