先生の全部、俺で埋めてあげる。
「教授は…」
「なんだ?」
「いや、さっきの話のことなんですけど」
「さっきの話?」
「俺も加ヶ梨先生のこと知ってます」
俺の方なんて一切見ない教授が、今日初めてちゃんと俺の顔を見た。
少し緊張しながら言葉を並べる。
「高校の時の担任だったんです。臨時教員でしたけど」
「本当か?」
「はい」
「元気にやってたか?」
「はい」
「そうか」
教授の言葉がやけに重く感じる。
この研究室の空気も。