先生の全部、俺で埋めてあげる。



「ダメだよ、掴まって」


先生は俺を支えるようにして持ち上げた。


大丈夫だって言ってるのに…。




俺は昔から体が弱かった。


小さい時は貧血で倒れることもしばしば。


高校生になってからはなかったのに、よりによってなんで今なんだよ…。




先生は俺より体が小さいくせに、俺を一生懸命支えてくれてる。


細い腕が折れてしまうんじゃないかって、こっちが心配になるくらい。




「本当に大丈夫ですから、一人で歩けます」

先生から離れようと体重を自分中心に戻そうとすると


「ダメだって言ってるでしょ」

そう言ってまた先生に寄りかかる形になってしまった。




先生って意外と頑固だな。




先生の体温が自分の体を通して伝わってくる。




あったかい。




もうろうとする意識の中で、俺はただその温もりを感じていた。



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