桝田くんは痛みを知らない
みんな、知らない。
マサオミくんは、
一度だけチョコを食べたことがある。
スーパーで20円くらいで買える、小さな四角いチョコ。
それを、マサオミくんが甘いものが苦手ってことを知らなかったわたしは、うっかり渡したら――
『ありがとう。うれしいよ』
って、食べてくれた。
それが、わたしが男の子に渡した最初で最後のバレンタインチョコになった。
あのこと、マサオミくんは、もう忘れちゃっているだろうな。
……来年のバレンタインは。
ヨシヒサくんに、あげたいな。
「まちがいなく出世するタイプですよね、先輩は」
「どうかな」
「味方をつけるのが上手いですよねえ」
マサオミくんは、
一度だけチョコを食べたことがある。
スーパーで20円くらいで買える、小さな四角いチョコ。
それを、マサオミくんが甘いものが苦手ってことを知らなかったわたしは、うっかり渡したら――
『ありがとう。うれしいよ』
って、食べてくれた。
それが、わたしが男の子に渡した最初で最後のバレンタインチョコになった。
あのこと、マサオミくんは、もう忘れちゃっているだろうな。
……来年のバレンタインは。
ヨシヒサくんに、あげたいな。
「まちがいなく出世するタイプですよね、先輩は」
「どうかな」
「味方をつけるのが上手いですよねえ」