桝田くんは痛みを知らない
「買い被りすぎだよ」


 マサオミくんは、いつも穏やかだ。


 子供時代から本当に落ち着いていて

 マサオミくんの家で留守番をしていた日に雷が鳴ったことがあったんだけど、

 “大丈夫だから”って安心させてくれた。


 そういうのも。

 わたしだけが覚えている思い出なんだろうな。


 マサオミくんにとっては、人に優しくするのが、特別ではなくて。


 マサオミくんの優しさに救われているのは、わたしだけじゃなくて。


 マサオミくんはたくさんの人を幸せにしている。


「いやいや。校長先生をはじめ教師陣や事務員まで。先輩のこと信用してるじゃないです?」

「いくら褒めても。もう、なんにも買ってあげないよ」

「別になにか欲しくて褒めてるわけじゃないですよー。そんな先輩には。敵って、いるんですか?」

「……いるよ。1人だけ」


 ――――テキ?


 マサオミくんに?


 こんなに人から好かれていて。

 頼りになるマサオミくんに、敵がいるの? 
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