私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
第十七章・明かされる真実

 別宅が襲撃を受けてから、五日後。
 包囲から逃れたゆり達は、瞑にいた。転移の呪符で瞑の穴蔵に移動したゆりら一行は、草木も生えぬ荒野のど真ん中にいた。

 瞑の穴蔵は荒野の地下深くに造られていて、岐附の穴蔵と違い、人が生活できるように造られていた。
 ゆり達は、風間捜索隊に連絡を送り、合流するのを待っていた。だが、その雰囲気は重苦しく、暗い。

 ゆりはある一室の前で、憂いな表情で拳を作っていた。ノックしようかどうしようか躊躇って、ゆりは思い切って部屋をノックした。
 だが、応答はなかった。
 ゆりは、静かにドアを開けた。

 その部屋は、闇の底へ続くかのように暗かった。
 地下の部屋なのに、明かりを点けていないからだ。

「雪村くん、いるの?」

 問いかけたが、返事はない。だが、人の気配はしていた。忍び泣くような、微かな声が聞こえる。
 ゆりは、廊下のランプを取り外した。それを翳して中に入る。すると、部屋の隅に蹲っている雪村を見つけた。

「雪村くん」

 雪村は呼びかけに一瞬ビクッと肩を動かして、急いで涙を拭うしぐさをした。振り返って、笑う。だが、その表情は硬い。

「どうしたの?」
「……様子を見に来たの。大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。俺のことより、ゆりちゃんはどうなの? 大丈夫?」
「……うん」

 ゆりは小さく頷いた。
 重苦しい沈黙が続いて、不意に雪村が立ち上がった。

「俺、ちょっと地上に出てくるね」
「……わかった」
 ゆりは去って行く雪村の背中を、静かに見送った。
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