何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
まだ時間に余裕があるにも関わらず、駆け足で城へと向かう華子に、天音は必死に着いていった。
そのため、城に着いたころには、ゼーゼーと息が切れていた。

「か、華子、そんな急いでどうかしたの?」
「これ見て。」

華子は、人だかりのできている掲示の前に天音を連れてきて、そう言った。

「え?試験?」

その掲示によると、どうやら、今いる妃候補を減らす試験が明日行われるらしい。
それは、突然の通達だった。その通達に、もちろん周りの妃候補達も、動揺を隠せずにいた。

「ず、ずいぶん急だね…。」
「そうなんだよー!これに落ちたら、帰んなきゃいけないんだよ!」

…急に明日試験なんて、何の準備もなく…?もしこれに落ちたら、妃にはなれない……。
天音もなぜだか、急に不安が押し寄せてくる。

「自信ない?」

不安気な天音の耳に届いたのは、いつもと同じ冷静な星羅の声だった。
天音が見上げたその星羅の表情は、他の妃候補達とは真逆で、自身さえうかがえるものだった。

「…。」

他の妃候補と同様、天音も急な事で不安は拭えない。

「私は、絶対に残る。」

しかし星羅は、凛とした表情で、当然のようにそう口にした。
彼女には自信、いや絶対に残らなければならない、何かがあるに違いない。
天音はその時、星羅の強い意志を知ったのだ。


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