何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

その日の夜ふけ

天音は布団に入ったものの、明日の試験の事が気になって、一人寝つけないでいた。
天音以外の二人は寝息を立てているにも関わらず、天音は何度も何度も寝返りを打つが、一向に眠気はやってこない。

「た…す…けて…。」

ベットの上で何十回目の寝返りを打ったその時、天音の耳には、誰かの苦しそうな声が聞こえてきた。

「え…？誰の声…？」

その声は女性の声ではなく、まだ若い少年のような声だった。つまり、この部屋の者の声ではない。
もちろん天音以外の二人は、その声にきがつくはずもなく、今も寝息をたてている。

「…この声どこかで…。」

そしてこの声は、天音の聞き覚えのある声のように思えた。
あまりにも苦しそうな声と、どこか懐かしいその声が気になって仕方ない。
…もしかして、怪我とかしてる人かな？すごく苦しそうだし…。

「う…、く…。」

その苦しそうな声は、微かだけど、再び天音の耳に届いた。

（やっぱりほっとけない。夜だし、少しだけ様子見え来るだけなら、見つからないよね。）