何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「さて、今日、君達にはある試練を受けてもらう。」

大広間に集められた妃候補を前に、士導長が落ち着いて話し始めた。
そう今日は、妃候補達に試練が与えられる日なのだ。

「まあ、そんなに構える事ではない。」

とはいっても、この試練によって、妃候補は半分に減らされる。
彼女達の表情が強張るのも、無理もない。

「一人ずつある場所に連れて行く。その扉の先には、道があるだけじゃ。この道は欲望さえなければ、最後まで辿り着ける一本道。」

そんな不思議な場所があるなんて、やはりこの城は迷路、いやまるで異空間のようにでもなっているんじゃないか、と疑いたくなる。

「なんだ。この町に入る時と似てるじゃん。」

不安な面持ちの妃候補を横目に、華子は士導長の話を聞いて、余裕の表情を見せた。

「道は一本。最後まで辿りつけた者の中で、早く着いたものから順に、妃候補として残れる。」
「クス。どんな怪物がいるのかしら?」

もちろん星羅も、そんな冗談を言うほどの余裕の現れだ。

「へ?怪物…。」

しかしその横で、不安気な天音は、そんな星羅の冗談も真に受けて、目を丸くした。

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