何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「天音、ありがとう。」

すると突然青が、天音が想像もしていなかったその言葉を口にした。

「え?」

突然のその言葉に、天音はきょとんとした表情を青に向ける事しかできない。
…お礼を言われる事なんて、何もしていないのに。

「きっと神様が言ってるよ天音に。神様を信じてくれて、ありがとうって。」

青が柔らかく微笑みながらそう言った。

「えー。なにそれ!」

天音も、そう言って笑った。
そして二人は楽しそうに笑い合った。
このだだっ広い部屋に、二人の笑い声だけがこだました。

「そっか。じゃあ、僕も信じるよ。」

そう言って、青はニッコリと笑って天音の方を見た。

「本当?」
「ああ。もう一度…。」
「え…。」

しかし、その青い瞳に、またあの寂しさが宿っていたのを、天音は見逃す事は出来なかった。

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