何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「でも、天音が来てくれれば、もう寂しくない。」
そして、青は顔を上げて、少し寂しげに笑った。
「うん。」
「必ず天音が会いに来てくれるって信じてた。」
「え…。」
そんな青の真っ直ぐな気持ちに、天音は何とも言えない、申し訳ないような気持ちになった。
青はここで自分を待っていてくれてたようだ。しかし、自分は青とどこであったのかも覚えていない…。
「いいんだ。覚えてなくても。それに、僕は自分でこの部屋にいる事を選んだんだ。」
「そう…なの?」
青はまた、天音の表情から彼女の気持ちを読み取り、それは自らの選んだ道だと言って笑った。
しかし、青のその言葉は、どこか無理やり自分を納得させているようにも思えた。
「ねえ、青は神様がいるって信じる?」
天音は、なんだかいたたまれなくなり、話題を変えようと思い、青に突然そんな質問を投げかけた。
「え…。」
しかし、青はその言葉に、思わず目を見開き、その表情は固まった。
天音は先ほど聞いた、星羅のあの言葉がどうしても気になっていたため、誰かに聞いてほしかった。
『神がいるなら、天師教はいらない…。』
そして、星羅と話した事をゆつくりと青に話し始めた。
「天音は、神様を信じてるんだね。」
「え…うん。幼い頃に聞かなかった?神様はお空の上にいるんだって…。でも同じ部屋の子はいないって言ってた…。」
「ふーん。」
青は天音の言葉に耳を傾け、どこか遠くを見つめているようだった。
「それに、昔、誰かが言ってた気がするんだ。神様はどこかで見守ってくれているって。」
天音がポツリとそうつぶやいた。
それは誰に聞いた言葉だっただろうか…。それは思い出せない。
でも、天音はそんな子供騙しのような言葉を、今も信じていた。
神様は、きっと空の上にいて、自分達の事を見守っている。そんな存在なんだと…。