何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「こいつは悪魔。」

そこに居たのは、彼女も使教徒であるみるかだった。そこにいる大人達とは明らかに違い、背丈の低い彼女は、下から彼らの事を見上げていた。

「笑ってるの、人が運命に翻弄されるのを見て。」
「あ?」

月斗が不機嫌そうな顔で、突然現れ、饒舌に話し始めたみるかを睨んだ。
月斗には、大人も子供も関係ない。
彼のその目は、まるで、全ての人が自分の敵というような目。

「クスクス。」

しかし、みるかは、そんな月斗に怯む事なく、むしろバカにするように、わざとらしく笑った。
その行為が月斗の反感をかったのは、言うまでもない。

「なんや、変わった子がおるもんやなー。」

月斗に向かって食ってかかる、子供らしくないみるかを、りんは見た事のない、珍しい生物を見るような目でマジマジと見つめた。

「教えてあげたら?かずさ。この世は滅びるって。」

そして、そんな彼女が、かずさとは顔見知りだという事だけは、そこにいる全員が理解できた。

「みるか、もういいわ。」

かずさは、もううんざりという視線をみるかへと送り始めた。どうやら、彼女の勝手な行動は、かずさを悩ませる種のようだ。

「だって、使教徒は集まるんだから。」

タッタッタ

冷たい目でそう言い放ったみるかは、突然走って行ってしまった。

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