何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
“じいちゃんより”
確かにそう書いてあった。
(じいちゃんから?
うちの村には、手紙を配達する人は来ないんじゃなかったの?)
天音は、一瞬疑うように、困惑した表情を見せた。
でも、じいちゃんはそれでも、なんらかの方法で手紙を出したくれたに違いない。じいちゃんならきっとそうしてくれるに違いない。と思い直して、急いで手紙を開けた。
「――――運命に立ち向かえ。」
私はわからなくなったんだ…。
何を信じればいいのか…。
「天音…?」
下を向いたまま顔を上げようとしない天音に、華子が心配そうに声をかけた。
「…。」
天音はいつの間にか、手紙を強く握り締めていた。
そのため手紙はクシャクシャになってしまい、もうその跡形はない。
ポタ
その時、一粒の雫が、彼女の強く握りしめた拳の上に落ちた。
「う…。」
そして、天音は声を押し殺すように、奥歯を強く噛みしめた。
なぜだろう…。
泣いてはいけないなんて規則はないのに…。
でも、やっぱり泣いてはいけないような気がした。