何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「ジャンヌ…。」
辰は暗闇に包まれた夜更けに、ジャンヌの墓の前に一人立ち尽くして、もうこの世にはいない彼女の名をポツリとつぶやいた。
「もし、お前が生きていたら、天音に何と声をかけていたんだろうな…。」
ザー
もちろん、その答えは返ってくることはない。ただ優しい風の音だけが、辰の耳をかすめた。
「天音に全てを受け入れさせるのは、酷なのか…。」
辰の悲痛な瞳には、ポツリと寂しく、そこに佇むお墓が映るだけだった。